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歯科矯正にかかる費用はどれくらい?治療費の内訳や医療費控除について解説
24.08.10
カテゴリ:マウスピース矯正
厚生労働省から公表された「令和4年歯科疾患実態調査」によると、現在、歯科矯正を行っている日本人の割合は約20%とされていますが、噛み合わせが悪いと認められた人の割合は全体の60%超とのことです。
つまり、矯正治療が必要であるにもかかわらず、実際、治療を受けていない方が多いことがわかります。
矯正治療を受けない(受けたくない)理由として、「見た目がよくない」、「通うのが面倒」、そして、「お金がかかる」というイメージがあるようです。
実際に、矯正治療にはどれくらいの費用がかかるのでしょうか。
本記事では、矯正治療にかかる費用について解説します。また、自己負担を軽減できる「医療費控除」についても解説しますので、是非ご一読ください。
Contents
歯列矯正の治療に伴う費用の内訳
歯列矯正に伴う費用は、大きく3つに分かれます。
● 治療前
● 治療中
● 治療後
それぞれについて解説していきます。
治療前にかかる費用
治療前にかかる費用として、「カウンセリング料」や「検査料」が挙げられます。
「カウンセリング料」は無料~5000円程度と、歯科医院によって異なります。カウンセリング料とは、歯科医師による問診に伴う料金です。どのような悩みや不安を抱えているのか、どのような矯正治療を行うべきか、など質疑応答できる場となります。
矯正治療を行うにあたり、歯列がどのような状態なのかを確認するためのレントゲン撮影やCT撮影、虫歯チェックが「検査料」に該当します。検査料も様々で、無料のところや数万円かかる歯科医院もあるようです。
治療中にかかる費用
治療が始まると、「矯正装置料」や「処置・調整料」が発生します。
「矯正装置料」とは、矯正するために用いられる矯正器具の料金です。後ほど詳しく解説しますが、表側・裏側矯正で用いられる「ブラケット」や「ワイヤー」、マウスピース矯正で用いられる「マウスピース」がこれに当たります。それぞれの費用の目安については、後述します。
「処置・調整料」は受診のたびにかかる費用で、1回あたり3000円~1万円程度です。矯正装置を装着するための処置費用や、装着後、矯正する力が適切かどうかを調整する費用が該当します。調整する期間は、大体1ヶ月に一度です。
治療後にかかる費用
矯正して嚙み合わせが正常になっても、歯は元の場所に戻ろうとします。これを防ぐための装置が「保定装置」です。治療後はこの保定装置にかかる「保定装置料」と、「保定観察料」が発生します。
「保定装置料」は、無料~6万円ほどかかる場合もあります。保定装置の種類は、ワイヤータイプやマウスピースタイプなど、様々です。保定装置は1~3年装着する必要があります。
「保定観察料」は、保定装置の状態に問題はないか、矯正した歯列が戻っていないか、など経過観察を行うための費用です。受診のたびに、3000円前後の費用がかかります。保定装置装着当初は1ヶ月に1回の通院が必要ですが、問題なければ、半年に1回、1年に1回と通院間隔が徐々に長くなります。
矯正治療の種類と費用
矯正治療の種類によって、かかる費用は大きく変わります。
まずは、矯正治療の種類についてみていきましょう。
部分矯正と全体矯正
矯正治療は大きく「部分矯正」と「全体矯正」の2種類に分けられます。
名前の通りですが、「部分矯正」は前歯だけなど、歯列の一部を矯正する治療、「全体矯正」は歯列全体を矯正する治療です。それぞれの費用の目安は以下の通りです。
● 部分矯正 ⇒ 10万円~100万円 ● 全体矯正 ⇒ 60万円~170万円 |
前歯1本のみから部分矯正が可能です。全体矯正と比較すると、費用も抑えられますし、2カ月程度と短期間で終わることも特徴と言えます。それほど痛みは伴わず、気軽に始めやすい治療です。
デメリットとしては、前歯の矯正がメインとなるため、嚙み合わせは改善しづらい点です。見た目の改善を重視するため、噛み合わせの調整は難しいです。また、見た目を綺麗にしても、歯並びが悪くなった根本原因を解決していないため、もとに戻ってしまうリスクもあります。「前歯だけ矯正したい」、「八重歯1本だけ整えたい」という方は部分矯正がおすすめです。
これに対し、奥歯を含めて嚙み合わせを改善させる場合や、歯列を全体的に動かす必要がある場合は、時間や費用がかかったとしても、全体矯正をおすすめします。
矯正方法と費用
矯正方法によっても費用の相場が異なります。目安は以下の通りです。
① 表側矯正(ワイヤー矯正) ⇒ 30万~130万円 ② 裏側矯正(ワイヤー矯正) ⇒ 40万~170万円 ③ マウスピース矯正 ⇒ 10万~100万円 |
①表側矯正(ワイヤー矯正)
歯の表面に、「ブラケット」という矯正装置を取り付けてワイヤーを通し、歯を動かしたい方向に矯正する方法です。様々な症例への適応が可能である反面、目立ちやすいというデメリットがあります。最近では、目立ちにくいブラケットやワイヤーもありますので、歯科医師に相談してみましょう。
表側矯正の部分矯正は30万~60万円、全体矯正は60万~130万円です。
②裏側矯正(ワイヤー矯正)
歯の表面ではなく、裏側にブラケットとワイヤーを装着し、矯正する方法です。裏側に装着しているため、目立ちにくいというメリットがあります。なお、裏側矯正は歯科医師や歯科技工士の高度な技術が必要なため、費用は表側矯正よりも高めです。
裏側矯正の部分矯正の相場は40万~70万円、全体矯正は100万~170万円です。
③マウスピース矯正
マウスピース矯正は、ブラケットやワイヤーを使用せず、透明なマウスピースを装着することにより、歯列を矯正する方法です。無色透明なため、目立ちにくく、費用も比較的安価で済みます。その反面、食事の際はいちいち外さなければならない、お茶やコーヒーを飲むと、マウスピースに着色汚れがついてしまう、治療期間が延長することが多い、といったデメリットもあります。
マウスピース矯正の部分矯正は10万~40万円、全体矯正は60万~100万円です。
それぞれにメリット・デメリットがあるため、医師と相談しながら、矯正方法を決めましょう。
医療費控除を活用しよう!
以上のように、歯列矯正は高額になりやすく、医療費の負担は少なくありません。
そこで活用したいのが、「医療費控除」です。
医療費控除の仕組み
まずは、医療費控除の仕組みについて解説します。
医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費の総額が一定額を超えた場合、所得控除を受けることができる制度です(参考:国税庁「医療費を支払ったとき(医療費控除)」)。歯科矯正は長期間に及ぶため、年をまたぐ場合は注意しましょう。
医療費控除の対象となる金額は、<生計を一にする家族全員の総支払額>のうち、<10万円>を超えた金額分です。しかし、10万円を超えた分がそのまま戻ってくるわけではなく、10万円超えた金額に所得税率をかけた金額が戻ってきます。課税所得と所得税率についてはこちらを参考にしてください→国税庁「所得税の税率」。
例えば、課税所得額500万円の場合、所得税率は20%です。仮に、医療費総支払額が40万円だったとすると、30万円が医療費控除の対象額となるため、30万円×0.2=6万円が戻ってくるという計算です。
医療費控除の対象にならない治療も
注意すべき点は、全ての歯科治療の費用が医療費控除の対象とはならない、ということです(参考:国税庁「医療費控除の対象となる歯の治療費の具体例」)。
<審美目的>の治療、すなわち、歯の見た目や美しさを求める治療は医療費控除の対象とはならず、<医療目的>の治療が対象となります。例えば、見た目をよくするために歯を白くする「ホワイトニング」は対象外ですが、虫歯や歯周病予防のために「着色を取る治療」は対象です。
歯列矯正の治療についても同様で、見た目を良くするために歯並びを整える矯正は、審美目的のため、対象外です。噛み合わせが悪く、食べ物が噛み切れない、滑舌に問題があるなどの場合は、医療目的に該当するため、対象となります。また、子供の歯科矯正治療は、成長に必要な治療とみなされるため、医療費控除の対象です。
医療費控除の対象となる治療かどうか、必ず歯科医師に確認しておきましょう。
その他、医療費控除の対象となる費用/ならない費用
分割払いや歯科ローンを利用した支払いであっても、医療費控除の対象となります。ローンを利用すると、領収書がない場合があるため、医療費控除を受ける時の支出を証明する書類を準備しておきましょう。ローンの契約書や信販会社の領収書を保存しておいてください。なお、分割払いやローン利用に伴う金利は対象外となりますので、注意しましょう。
また、バスや電車などを利用した際の交通費は、医療費控除の対象です。領収書がない場合がほとんどのため、公共交通機関を利用したことを忘れないようにどこかにメモしておきましょう。年齢や病状により、一人で通院することが困難な場合は、付き添いの方の交通費も対象です。
病状により、急を要する場合や公共交通機関が利用できない場合のタクシー利用料は医療費控除の対象です。車で通院した際のガソリン代は対象となりません。