近年の歯科治療は術者のスキルだけでなく、様々な高性能機器によって支えられています。
医療機器が発達すると、これまで見逃されがちだった病気が早く発見できたり、治療によるダメージを最小限に抑えられたりと、患者さんのメリットも大きくなります。
今回ご紹介するマイクロスコープもその1つで、マイクロスコープの誕生によって歯科治療の精度は格段によくなっています。
ここではマイクロスコープとはどのような機器か、さらにマイクロスコープを使った治療と従来の治療の違いなどをご紹介していきましょう。
Contents
マイクロスコープを用いた精密歯科治療
マイクロスコープとは?
マイクロスコープは医療用の顕微鏡で、これまでにも心臓外科や脳神経外科、美容整形などの医療分野で使用されてきました。近年はこれを歯科用に応用したマイクロスコープが誕生し、導入する歯科医院も増えています。
マイクロスコープの最大の特長は、肉眼では見えにくい細かい部位を3~30倍ほどまで拡大できる点です。さらに、マイクロスコープのレンズにはライトがついているため、肉眼で見る時よりも視野が明確になります。
なぜ、マイクロスコープが必要?
歯科医療の対象となる歯は1つ1つがとても小さく、その内部を肉眼で見るにも限界があります。
歯の中では比較的大きな奥歯(大臼歯)にしても、タテ・ヨコの幅は10~11mm程度に過ぎません。例えるなら、1㎝四方のサイコロに穴を空けていく感じです。
サイコロの場合は手にとれば中を確認できますが、私たちが治療する歯は暗くて狭いお口の中に固定された状態になっています。歯科医師はこれを直接、あるいはミラー越しに見ながら治療を行ないますが、肉眼で見える範囲はどうしても限られます。
そのため従来の治療では、レントゲンで得た情報と歯科医師の手指の感覚を頼りに進めるしかありません。しかしマイクロスコープを使えば、肉眼では見えなかった部位もレンズを通してはっきりと見ることができ、診断や治療がより正確に行えるようになります。
どんな治療に使用する?
マイクロスコープは歯科治療の様々な分野に使用できます。
もっとも活躍するのは根管治療(歯の根っこの治療)ですが、ほかにも虫歯治療や歯周病治療、被せ物の治療、審美治療、インプラントなどの外科治療などで活用されています。
マイクロスコープ治療はどんな人におすすめ?
マイクロスコープ治療は、一般に治療が難しいといわれる「困難症例」や、治療を続けてもなかなか治らない「難治症例」に適しています。
具体例でいうと、通常では治療が難しく抜歯になるケースや、繰り返し治療しても腫れや痛みなどの症状が消えないケースです。
詳しい検査の結果「抜歯」と言われた方や、長く通院しているのになかなか治らないという方は、一度検討してみるとよいでしょう。また、「多少費用がかかっても、1回の治療できっちり治したい」という方にもマイクロスコープ治療はおすすめです。
マイクロスコープを使うと治療はどう変わる?
マイクロスコープ治療の最大の利点は、これまで見えなかった部位がはっきり見えるようになることです。これにより、従来の治療とどのような点が変わってくるのかを以下に詳しく解説していきましょう。
診断や治療がより「正確」かつ「精密」に
マイクロスコープにより視野が明確になると、肉眼では見えない、さらにはレントゲンにも写らないような小さな虫歯や歯のヒビなどを見つけることができます。
通常では見逃されがちな病変をいち早く発見することは、病状の進行を抑えたり、将来抜歯になるリスクを回避したりするうえで非常に重要です。
また、歯科医師の手指の感覚が頼りであった従来型の治療も、マイクロスコープを使えば患部を確認しながら治療が行えるため、治療がより正確に、精密に行えます。
治療による負担が少ない
マイクロスコープで治療部位を拡大すると、「歯の削りすぎ」を防ぐことができます。
健康な歯質を多く残せるので治療によるダメージが少ないほか、大きな虫歯でも神経を残せる可能性が高くなります。
「抜歯」と言われた歯でも残せるようになる
歯科疾患には「難治症例」といって、通常の治療では症状の改善が難しいケースもいくつかあります。そのなかには、症状の原因が肉眼や拡大鏡(ルーペ)では確認できない部位にあり、通常の治療だと取り除けず抜歯に至るケースも少なくありません。
しかし、このような難治症例でもマイクロスコープを使えば、原因の場所を特定して問題を解決できる可能性が高くなります。
歯の状態や治療の様子を画像・映像で見ることができる
マイクロスコープはお口の中を術者が見るだけでなく、その様子を画像や映像にして保存できます。
画像や映像を通して、実際に自身のお口の中がどのようになっているのか、どんな治療をしているのかを患者さん自身も理解しやすくなります。
マイクロスコープ治療のデメリット
保険が適用されない場合がある
マイクロスコープは一部の治療で条件付きで保険が適用できますが、そのほかの治療で使用する場合には自費治療(保険適用外)になることがあります。
マイクロスコープを保険診療でも使用するか、自費診療のみで使用するかは歯科医院によって異なるため、治療を受ける際は受診するクリニックに確認してみましょう。
治療を受けられる歯科医院が限られる
マイクロスコープは比較的新しい医療機器ですので、導入している歯科医院もまだそれほど多くありません。マイクロスコープ治療を希望する際は、ホームページ等で確認しておきましょう。
治療時間が長くなることがある
マイクロスコープ治療は1回の処置を的確に行うことで通院回数が減らせるのもメリットの1つです。ただしその分、治療時間が通常よりも長くなる場合があります。
マイクロスコープを用いた精密根管治療
ここでは活用の一例として、マイクロスコープを使用した精密根管治療についてご紹介します。
従来の治療との違い
根管治療は、歯の根っこ(歯根)の中にある「根管」という細い管を対象にした治療です。
一般に「神経を取る治療」「根っこの治療」と呼ばれるものがこれに当たります。根管の入り口は歯の奥深いとこにあり、その直径はわずか1mm程度で内部を肉眼で見ることはできません。
さらに根管は形状も複雑で、途中で大きく曲がっていたり、枝分かれしていたりするものもあります。そのため根管治療は「難治症例」も多く、肉眼や手指の感覚を頼りにした従来の治療では原因がうまく取り除けず、腫れや痛みを繰り返すケースも少なくありません。
マイクロスコープはこのような「目には見えない部位」を得意としており、根管治療の精度を飛躍的に向上させます。マイクロスコープを使うと肉眼では確認できない根管の内部の様子をとらえられるため、原因を特定し除去できるなど、より精密な治療を可能にします。
治療の流れ
根管治療ではまず虫歯や過去の詰め物・被せ物を除去し、根管の入り口(根管口)を見つけます。その入り口に「リーマー」「ファイル」と呼ばれる細い器具を入れ、根管を悪くする原因物質(感染物質)を取り除き、さらに薬剤で滅菌・消毒します。
通常の治療ではこの工程を複数回繰り返すケースも少なくありませんが、マイクロスコープを使うと1~4回程度で治療が終了するケースがほとんどです。根管内がきちんと清掃された後は、専用の薬剤を緊密に詰めて、新しい詰め物や被せ物を作製していきます。
名古屋プルチーノ歯科・矯正歯科のマイクロスコープ治療
プルチーノ歯科・矯正歯科ではマイクロスコープをいち早く導入し、様々な治療に活用しています。
全チェアにマイクロスコープを完備
当院ではすべてのチェア(診療台)にマイクロスコープを完備し、根管治療をはじめ、虫歯治療、歯周病治療、インプラント治療、矯正治療のあらゆるシーンで活用しています。
近年、マイクロスコープを導入する歯科医院は増えていますが、院内で1~2台ほど設置するのが一般的です。これにはコスト面も関係していますが、くわえてマイクロスコープの視野は肉眼の視野と大きく異なるため、治療には歯科医師にもより高度なスキルが必要となります。
当院では在籍するすべての歯科医師が日々研鑽を重ね、マイクロスコープ治療に取り組んでいます。
歯科衛生士もマイクロスコープを活用
当院には日本顕微鏡歯科学会認定の歯科衛生士が在籍しており、クリーニングや歯石除去、ブラッシング指導にもマイクロスコープを活用しています。
マイクロスコープを使うと、肉眼では見逃しやすい汚れ(プラーク・歯石)も徹底的に除去できるため、プロフェッショナルケアの質が向上します。
さらにブラッシング指導では、磨けていない部位や汚れの溜まりやすい部位を患者さんにもご覧いただけるため、予防のモチベーションがアップします。
まとめ
マイクロスコープは肉眼の3~30倍ほど視野を拡大し、治療の精度を飛躍的に向上させます。通常であれば抜歯になる歯や治療を続けても症状が改善しない歯でも、マイクロスコープによる精密治療で歯を残せる、あるいは症状を改善できる可能性が高まります。
「他院で抜歯と言われたけど、抜きたくない」
「治療を続けても治らない」
「治療をしても腫れや痛みを繰り返す」
などでお困りの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。